白内障
カメラのレンズに相当する水晶体が白く濁ってくる病気が、白内障です。水晶体は瞳孔の後ろにあり、濁りが増すにしたがい視力が低下してしまいます。主に加齢が原因ですが、アトピー性皮膚炎や外傷、糖尿病などによって引き起こされることもあります。
白内障の症状
進行するにつれ、視力が次第に低下していきます。初期の段階では読書などで眼が疲れる、人の顔がかすむ、眼鏡をかけてもはっきり見えない、といった症状が現れます。比較的早く進行したり、ほとんど進行しない状態が続いたり、濁りの進み方は人によって大きく異なります。
白内障の治療について
白内障の初期の治療では点眼薬などを用います。点眼薬の治療によって視力が回復したり、進行自体を止めることはできませんが、病気の進行を遅らせる効果が期待できます。
流涙(鼻涙管閉塞)
「涙でうるんでものが見ずらい」「目やにが付いて目が開かない」「涙がこぼれるのでハンカチが離せない」など、流涙は涙があふれる厄介な症状です。
眼瞼下垂
眼瞼挙筋という上まぶたを上げる筋肉がうまく機能せず、上まぶたが垂れ下がったままの状態を眼瞼下垂といいます。
緑内障
緑内障とは眼圧が上昇することで視神経が圧迫され、徐々に視神経が失われて視野(見える範囲)が狭まっていく病気です。放置すると視力も低下していき、最後には失明してしまいます。
前房と後房という眼の中は、毛様体というところで毎日一定量、新しくつくられる房水と呼ばれる水で満たされています。通常、房水は後房から前房へ循環し、隅角(房水の排水口)を通ってシュレム管(房水の排水管)から排出されますが、このはたらきの異常で、眼球は一定の硬さ、眼内の水圧を維持できなくなってしまうのです。
①原発閉塞隅角緑内障
慢性型で徐々に進行するものと、急激に眼圧が上がり、突然激しい眼の痛みや頭痛、充血、嘔気、嘔吐などの症状が現れる急性型があります。房水の排水口である隅角が狭くなってふさがることで、房水の循環と排出ができなくなり、眼圧が上がります。
②原発開放隅角緑内障
40歳以上で発病することが多い病気です。房水の排水口がふさがって排出できなくなることで、眼圧が上がります。
③正常眼圧緑内障
日本人の緑内障の約7割を占めます。眼圧の基準値は10~21mmHgですが、眼圧が基準値以内なのに視神経が耐えられずに障害されてしまう病気です。
④続発緑内障
他の眼の疾患やステロイド剤といった薬剤などによって眼圧が上がることが原因となる緑内障です。
緑内障の治療について
眼圧の程度にもよりますが、まずは点眼薬で眼圧の制御し、それでも眼圧が下がらないときは内服薬を処方します。開放隅角緑内障でこうした薬物療法で効果がない場合、房水の流れを改善するためのレーザー治療を行います。
薬物療法やレーザー治療は外来での治療が可能ですが、それでも眼圧が十分に下がらないとき、眼圧がある程度下がっていても視野の悪化が止められないときは手術が必要です。手術をしても視力や視野は回復しませんので、早期発見と継続治療が重要です。
網膜剥離
眼底から網膜が剥がれ、浮き上がってしまった状態です。硝子体というゼリーのような組織の網膜は、カメラでいうとフィルムにあたる部分で、本来、網膜は眼底にぴったりと押し付けられています。
網膜剥離の症状
進行すると視野の欠損を自覚できるようになりますが、初期の症状では蚊が飛ぶように見えたり、眼前に黒いゴマを散らしたような感じがする飛蚊症や、光が見える光視症があります。網膜が剥がれることによって痛み生じることはありません。
網膜剥離の治療について
薬物での治療ができないため、網膜剥離では剥がれてしまった網膜を元通りにする手術が必要になります。術後の視力は網膜剥離の進行状態によって変わりますので、早期に剥離を見つけ、視力の良いうちに手術をすることが重要になります。
加齢黄斑変性
加齢が原因で網膜の中央にある「黄斑」が傷み、視機能が低下する病気です。視細胞が減少し黄斑が萎縮してしまう萎縮型と、網膜に新生血管というもろい血管が生まれ、出血を繰り返す滲出型の2種類があります。黄斑には視細胞が集中しているため、黄斑の異常は視力に大きく影響を与えるのです。
加齢黄斑変性の症状
加齢黄斑変性には視野の中央が見えにくい、ゆがんで見える、色が前と違って見える、物が小さく見えるといった症状あります。
ムスラーチャートという格子状のシートを使ってチェックできます。アムスラーチャートを30センチ離した状態で片方の目で中心の黒い点を見つめ、ゆがみや中心部分が黒く見えるといった症状を調べます。眼鏡をかけている方は眼鏡をかけたままで行います。
滲出型の場合、急速に視力が下がる特徴がありますが、萎縮型の場合は進行がとても遅いので、多くの方は加齢のひとつとして見過ごしがちです。途中で滲出型に変わり急速に視野が下がることもあります。少しでも異常を感じたら眼科へすぐ受診するようにして、定期的な眼科の受診を心がけましょう。
加齢黄斑変性の治療について
萎縮型の場合
有効な治療法がないので、紫外線対策や適度な運動を心がけ、食生活の見直し、喫煙を控えるなど、定期的な通院による生活改善が大切です。
滲出型の場合
- 【抗VEGF療法】
点眼麻酔後、新生血管を収縮させる抗VEGF薬を硝子体に注射します。1回の治療は1分ほどで完了しますが、定期的に注射を行います。 - 【光線力学療法】
2日間ほどの入院が必要な治療法です。光に反応する薬剤を注射した後、レーザーで新生血管を詰まらせ、縮小させます。 - 【レーザー光凝固】
レーザー光の熱で新生血管を焼く治療です。病状によっては選択できない場合もありますが、抗VEGF療法や光線力学療法と異なり、1回の治療で済み、治療自体も数十分で完了し入院せずに実施できるメリットがあります。この治療法を適応できるかは、担当医師とご相談ください。
加齢黄斑変性では早期発見と早期治療が最も大切です。定期的に片目ずつアムスラーチャートで検査し、症状を自覚したら早めに眼科を受診しましょう。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症のひとつに挙げられています。糖尿病によって網膜の細い血管が障害され、視力が低下する病気です。高血糖が持続すると単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症と進行します。
糖尿病網膜症の症状
単純糖尿病網膜症
網膜症の初期段階で自覚症状はほとんどありませんが、一部の毛細血管が腫れたり、出血するといったことが見られます。
前増殖糖尿病網膜症
さらに血管が詰まり、出血、血液成分が染み出して硬性白斑が生じるといったことが多くありますが、この段階でも自覚症状はほぼありません。
増殖糖尿病網膜症
視力低下、飛蚊症といった自覚症状が現れ、硝子体出血や網膜剥離を起こすことがあります。飛蚊症や視力低下を自覚した時点で、糖尿病網膜症はかなり進行している可能性があり、失明にいたることもあります。糖尿病と診断されたら、必ず眼科を受診してください。
糖尿病網膜症の治療について
血糖コントロールが網膜症治療の根本となります。まずは血糖値をコントロールし、網膜症が悪化しないよう定期検診を行います。中期になると網膜症が進展を抑えるレーザーで治療し、黄班浮腫がある場合は、抗VEGF薬、ステロイド剤などの注射もします。硝子体出血、網膜剥離を起こしている末期には硝子体手術が必要です。
斜視
斜視はものを見ようとする際、片目は正面を向いていても、もう一方の片目が違う方向を向いてしまう状態です。外にずれる外斜視、内にずれる内斜視に加え、上下の斜視もあります。
成人の場合、特に急に斜視の症状が現れたケースでは、脳や全身の病気も疑われます。また、目を動かす筋肉の異常や眼球自体の病気が原因となったり、子供の頃からあった斜視が目立つようになることもあります。
斜視の症状
外見上の目の位置の変化のほか、奥行きが分かりにくい、両目で見ると1つのものが2つに見える複視といった症状もあります。
斜視の治療について
原因と種類によって治療方針は大きく変わります。疾患が原因のケースはその疾患の治療が優先です。斜視の程度や種類によっては手術適応になり、プリズム眼鏡という光を曲げる眼鏡を用いて、複視の改善をすることもあります。
近視・遠視・乱視
眼球に入る光は最初に角膜を通過して水晶体を通ります。水晶体は近くを見るときは厚くなり、遠くを見るときは薄くなるというふうに、周囲の毛様体によって厚さが調整され、ピントを合わせる機能があります。
近視、遠視、乱視は、この調節機能がうまくいかず屈折異常が起こっているのが原因です。また、人によって眼軸という角膜から網膜までの眼球の長さが違うことも、原因のひとつとなります。
近視・遠視・乱視の症状
近視
距離のあるものがぼんやりと見える症状です。強度の近視は網膜剥離が起こりやすいとされています。
遠視
近視とは逆に近くのものが見えにくい症状です。
乱視
焦点を1点に合わせられず、ものが二重に見えます。角膜のひずみが原因の正乱視、角膜表面が原因の不正乱視があり、近視や遠視と組み合わさる症状もあります。
近視・遠視・乱視の矯正・治療について
近視
眼鏡やコンタクトレンズを使用して矯正するほか、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、レーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)、ICL(アイシーエル)といった近視矯正手術もあります。
軽度の場合、オルソケラトロジーという特殊なデザインの高酸素透過性コンタクトレンズを睡眠中に装用し、角膜の形状を正しく矯正することで、日中を裸眼で過ごせるようにする近視矯正方法もあります。また、一時的な近視に対しては点眼薬で治療します。
遠視
眼鏡やコンタクトレンズによる矯正のほか、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)などの屈折矯正手術もあります。
乱視
眼鏡やコンタクトレンズで矯正しますが、不正乱視は角膜表面に問題があるため、ハードコンタクトレンズでのみ矯正が可能です。不正乱視に対しては円錐角膜手術、角膜移植など手術による治療もあります。
老視
毛様体筋という筋肉の力で水晶体の厚みを変えることで、私たちの眼は見たいものの距離に応じて自動でピントを合わせることができます。
しかし、加齢によって水晶体は弾力性が失われ、硬くなります。こうして調整力が衰え、自力で自由にピントを合わせられない状態が老視です。
老視の症状
症状は年齢や生活環境などにもよりますが、裸眼またはメガネやコンタクトレンズで遠くが見える状態で、近くを見るとぼやけて見えにくい、ピントが合うまで時間がかかる、長続きしない、疲れる、眼が痛くなる、頭痛がするなどがあります。
長時間にわたりパソコンやスマートフォンを見る人は、早ければ30歳代後半から自覚され、60歳過ぎまで顕著に進行します。裸眼でも近くにピントが合う近視の人は、症状を自覚しやすいとされています。
老視の治療
老視はすべての人に等しく起こります。眼の調整力を若返らせる治療はありません。ただ、目がかすむ、細かい字が見えにくいといった症状の原因がすべて老視とは限りませんので、症状を自覚したらまずは眼科を受診し、病気の有無を確認しましょう。
メガネやコンタクトレンズは運転、パソコン、読書など見たいものの距離に合ったものを使うことが大切です。便利な遠近両用のものなどもありますので、メガネやコンタクトレンズをつくる際は眼科医にご相談いただき、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
結膜炎
まぶたの裏側と眼球の白目を覆う結膜に炎症が起こるのが結膜炎です。結膜は感染やアレルギーなどで炎症が起きやすい所です。
結膜炎の症状
目の充血や目がごろごろする違和感、目やにやかゆみ、涙が出るといった症状が現れます
結膜炎の治療について
①感染による結膜炎
ウイルス性結膜炎はウイルスの感染により結膜が炎症を起こした状態で、中でも流行性角膜炎は非常に感染しやすい結膜炎です。二次感染や炎症を抑えるための抗菌剤、抗炎症剤の点眼を使用します。
細菌感染によって炎症を起こした状態の細菌性結膜炎では、抗菌点眼薬を使用します。
②感染はしない結膜炎
花粉やカビ、ダニ、特定の食べ物などが原因となるアレルギー性結膜炎は、異物が体内に入り込み免疫機能が敏感に反応した状態です。アレルギーの炎症を抑える抗アレルギー剤やステロイド点眼薬などを使用します。
結膜炎は後遺症や合併症などを引き起こすリスクもあり、自己判断で点眼をやめず、眼科医の指示のもと治療を続けることが重要です。また、目を触ったりこすったりしない、手を頻繁に洗う、目薬がまつげに付かないようにする、感染症を患ったらコンタクトを中止するといったことが結膜炎の予防につながります。
角膜炎
角膜は黒目の部分で、角膜上皮に傷ができるとバリア機能が壊れ、細菌やカビなどが感染して起こります。
角膜炎の症状
目が痛い、目がごろごろする、目が充血する、見づらい、涙が出るといった症状があります
角膜炎の治療について
①感染による角膜炎
細菌性角膜感染症
細菌が角膜内で増殖した炎症です。ゴミなどの異物やコンタクトレンズの装用で傷がつき発症します。抗生物質を配合した点眼薬を使用します。
真菌性角膜炎
真菌(カビ)で炎症が引き起こされます。ソフトコンタクトレンズの連続装用、手術後の免疫が、落ちたとき抗真菌性点眼薬や内服薬など、完治まで1~6ヵ月ほどかかることもあります。
角膜ヘルペス
精神的ストレスや疲労が原因で、体内のヘルペスウイルスが角膜炎を起こします。抗ウイルス眼軟膏を使う1~2週間ほどの治療ですが、再発を繰り返します。
アメーバ角膜炎
水中などに分布する微生物のアメーバによって引き起こされる角膜炎です。治療期間は約1~6ヵ月ほどで、消毒点眼薬や抗真菌点眼薬を使用します。ソフトコンタクトレンズの手入れが不十分でアメーバが角膜感染することが多くあります。
②免疫反応・アレルギー反応による角膜炎
免疫反応やアレルギー反応で角膜に炎症が現れた状態です。重症度などに応じてステロイド点眼薬・内服薬を用います。
角膜炎の予防法
結膜炎と同様に目をこすらない・触らない、目薬がまつげに付かないようにするほか、コンタクトレンズを正しいケアで使い、必ず眼科医の検査・処方を受け、定期的に眼科を受診することをおすすめします。
量販店、インターネットなどでも購入できますが、コンタクトレンズは高度管理医療機器です。視力や角膜のカーブのみならず、眼疾患の有無や健康状態、涙の量やコンタクトレンズの動き、使用目的や使用環境などを総合的に考えて処方します。